遺言者よりも先に受遺者が死亡した!
Q.母は、三人兄妹の2番目で、上に姉と弟(私にとって叔母と叔父)がいます。私は弟と二人兄弟です。叔母は生涯独身で子供もいません。叔母はここ10年ほど体調を悪くして入退院を繰り返していたため、母が叔母の看病や身の回りの世話をしてきました。
そのため叔母は、母のために遺産を全部譲るという遺言を残してくれているそうです。ところが、最近叔母よりも先に母が亡くなりました。叔母は痴呆で特別養護老人ホームに入っていて、母が亡くなった後は、私が叔母の世話をしています。
この先叔母が亡くなったとき、叔母が亡母のために残してくれた遺言はどうなるのでしょうか。
A.叔母の遺言は無効となる?
叔母が残した遺言は、受遺者(遺言によって遺産を譲り受ける人)である母が遺言者(叔母)よりも先に亡くなったことで効力を失います(民法994条1項)。遺言者は、通常自分の財産を特定の受遺者に譲り渡すために遺言を作成していますので、その受遺者が自分より先に亡くなってしまったら遺贈の目的を果たせないと考えるのが通常だからです。
ただ、遺言に、母が先に亡くなったときは、その相続人である質問者や弟さんに遺贈する、という一文が入っていれば、叔母が亡くなった後、質問者と弟さんが叔母の遺産を譲り受けることができます。
叔母が亡くなったら遺産はどうなるの?
遺言が効力を失った場合、叔母の遺産はどうなるのでしょうか。
叔母は独身で子供もいないとのことですので、親(質問者にとっての祖父母)も既に亡くなっていれば、叔母の兄妹が相続権を有することになります。母は叔母よりも先に亡くなっていますので、母が相続するはずであった相続分は、母に代わって質問者と弟さんが代襲相続することになります(民法889条2項)。
その場合の相続分は、叔父が健在であれば、叔父が2分の1、質問者と弟さんが各4分の1ずつです。
生前の貢献は寄与分で調整!
なお、質問者はもちろん、質問者の母も、長年にわたり叔母の療養看護に尽くしてきていますので、それが叔母の財産の維持と増殖に特に貢献したと見られる場合は、その貢献度に応じて、遺産から貢献分(寄与分)を先に取得し、残りを法定相続分に応じて分割をするという遺産分割方法を求めることが可能です。
ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所
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