実際の解決事例

賃貸マンションの住人と連絡がとれず家賃も滞納していたケースで、判決をとって明渡しの強制執行に及んだ事例

●相談内容●

夫が急逝して夫名義の賃貸マンションの一室を相続することになった。マンションの管理は全て夫に任せていたので、どのような方が入居していたのかも知らなかったが、家賃の支払口座を確認してみると3ヶ月程遅れいていることが判明した。また、契約も更新しておらず、更新料の支払もなかった。家賃の支払口座を相談者の名義に変える必要があったので、遅れている家賃の支払と変更後の口座の連絡、それに契約の更新をお願いする手紙を送ったが、契約者からは反応がなく、いつまで経っても家賃の支払はない。その後も、何度か手紙をおくったが反応がない。仕方がなくマンションに行ってみると換気扇がまわっていたので中にいるようた。しかし、呼び鈴を押して、声を出して呼んでも応答がない。郵便受けを覗いてみると郵便物はないので、相談者が送った手紙は読んでいるようだ。契約当時に保証人となっていた保証会社は既に倒産している。契約書に書かれていた緊急連絡先の親に連絡してみたが、親も契約者と何年も連絡がとれず心配している様子。その後も家賃は支払われず、困って弁護士に相談。

●解決事例●

相談後すぐに受任し、弁護士から未払家賃の督促と、期限までに支払われなかった場合の契約解除の通知書を内容証明郵便と特定記録郵便で発信。内容証明郵便は保管期間の経過で返送されてきたが、特定記録郵便は相手に到達した模様。しかし、一向に連絡がなかったので、もう一度特定記録郵便で通知書を送ったが、これまた反応がない。仕方なく貸室の明渡と未払賃料の支払を求めて提訴。裁判所から呼出状が相手に送達されたが、こちらも返送されてきた。休日、夜間に送っても同じであった。裁判所から相手の居住の事実の調査を求められたので、弁護士が現地を調査。表札はないが弁護士から送った特定記録郵便が郵便受けからとられていたことや換気扇が回っていたこと、住民票の異動がないことなどから居住の事実が認められたので裁判所に報告書を提出。裁判所が付郵便送達の決定を出して、裁判は契約者が呼出状を受け取ったかどうかにかかわらず進められることになった。裁判は、契約者不在のまま結審、勝訴判決となった。契約者が裁判所に出廷してくれば話し合いによる解決も可能であったが、それも難しいため強制執行を申し立てることを決断。判決確定後、すぐに建物明渡の強制執行を申し立て、執行官と補助者、立会人、鍵屋、弁護士が現地を訪問、呼び鈴を鳴らした後、反応がないのでスペアキーをもってドアを開けた。すると内鍵がかかっておりドアは開かず。同行した鍵屋がスコープを使って室内を確認、工具でドアを開けようとすると、居住者が鍵を開けて出てきた。契約者本人であった。契約者は状況を把握できない様子。その日は1ヶ月後に明渡しを断行すると予告して帰ることになった。部屋の中には執行官が明渡期限を書いた公示書を貼った。明渡期限には、執行官、補助者、鍵屋、引越業者、立会人、弁護士など、総勢10名ほどで現地に赴き、解錠したうえで中に入り、小一時間で全ての荷物を搬出し、鍵も変えて執行は終了した。契約者は、精神的に病んでいる様子であったため役所の福祉課に連絡をして協力を要請、生活保護の担当者の配慮もあってそのまま保護施設に向かった。

●ポイント●

最近運用目的でマンションを所有する方が増えています。購入した後、日々契約者と顔を合わせていれば何か問題が生じた場合でも話し合いを進めることができますが、本件のように相続で引き継いだマンションで、契約者とも面識がなく、しかも連絡がとれないとなると賃貸人としては対処のしようがありません。保証人や管理会社、親族が協力してくれれば家賃の支払や退去等の話し合いもできますが、そうでないと裁判を起こすしかありません。家賃の滞納を放置していると、その間は予定していた運用益を得られなくなりますので、当初の投資計画、資金計画が狂ってきます。裁判、強制執行まで進むと費用も相当高額になりますし、その間は家賃が支払われませんので損害は益々拡大します。裁判を起こすかどうかの見極めはケースバイケースですが、本件のようなケースでは即座に対応し、できるだけ短期間で解決に導くことがポイントです。契約者も、幸い役所の協力で退去後の当面の生活が確保されましたので、一安心の事件でした。

弁護士好川久治

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