工事中の隣家の塀が倒れて怪我をした!
Q.先日、小学校2年生の息子が友達と道路で遊んでいたとき、過って工事中の隣家のブロック塀にぶつかって塀が崩れ、足を骨折する怪我をしてしまいました。息子は友達の蹴ったサッカーボールを追いかけてブロック塀の傍に向かったところ、業者が道路脇に積み上げていたブロックに足を引っ掛けて塀にぶつかったそうです。息子の治療費は請求できるのでしょうか。できるとして誰に請求すればよいのでしょうか。
A.第一次的な責任は工事業者にある!
事故の原因は、工事業者が道路にブロックを放置していたことと、子供がぶつかっただけで崩れたブロック塀の強度のなさにあります。
道路は人や車が行き来する場所ですから、工事中とは言え、ブロック塀を放置していたことに工事業者の過失があることは明らかです。したがって、工事業者に対しては、不法行為(民法709条)に基づき損害賠償を求めることが可能です。
また、ブロックに足を引っ掛けて転倒しただけなら骨折という重傷には至らなかったと思われますので、ブロック塀の強度に問題があったことが怪我の原因と考えられます。
工事の施工に問題があったとすれば、工事業者が危険なブロック塀を施工し、必要な事故防止策もとらずに放置していたことが事故の原因ですので、やはり工事業者は責任を免れません。
工事が終わった後なら家主に対して請求できることも!
ところで、事故発生時点の工事の進捗が未だ工事中であるなら、工事業者がブロック塀の管理について第一次的責任を負うと言えますが、工事も概ね終わり、発注者である隣家の家主に引き渡された後であるとすると、家主にブロック塀の管理占有が移ったとも評価できますので、その場合には、家主に対し、ブロック塀という土地工作物の占有者あるいは所有者としての損害賠償を求めていくことも考えられます。
損害については、治療費だけでなく、未だ小学校2年生ですので、通院に親御さんが付き添ったことによる通院付添費、交通費、通院期間に応じた慰謝料、万が一後遺障害が残った場合には、後遺障害の程度に応じた慰謝料、将来の逸失利益(後遺障害のために失った労働能力を補てんする損害)も請求可能です。
損害算定にあたり、お子さんの過失が考慮されることがある!
なお、道路で遊んでブロック塀に足を引っかけたことについてお子さんに過失があると評価されないかが問題となります。
確かに、遊びに夢中になっていて道路のブロックに注意が向かなかったお子さんにも事故発生の一端があったのかもしれません。しかし、足を引っ掛けて転倒して怪我をするだけなら骨折という重大事態には至らなかったでしょうし、ブロック塀の崩落と骨折という事故の本質的な面についてお子さんの過失を問題にするのは酷のように思います。
仮に、お子さんの過失を認めざるをえないとしても、ブロック塀の崩落と骨折という損害全体からすると5~10%程度の評価に止まるでしょう。
ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所
弁護士好川久治
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