相続分の指定と遺産分割方法の指定
Q.私は既に70歳を超え、昨年大きな病もしましたので、最近は自分が死んだ後のことを考えるようになりました。資産は自宅の土地建物と多少の預金、上場株式、ゴルフ会員権などがあります。家族は、妻と子供二人です。子供はいずれも独立しています。うち一人は私が大病をしたときに介護をしてくれて老齢の妻も私も大変助かりました。多少遺産を多く残してあげたいと思いますが、どのような遺言を残せばよいでしょうか。
A.相続する遺産の割合を指定するか、個々の財産の取得者を決めるかの違い!
方法としては、遺産を多く残したい子に本来の法定相続分(4分の1)より大きめの相続分(例えば3分の1)を指定して、妻ともう一人の子で残りの相続分(例えば3分の2)を分け合うようにするか(相続分の指定、民法902条)、個々の財産を特定してそれぞれ相続させたい者に「相続させる」旨を定める方法(遺産分割方法の指定、例えば妻に土地建物を、多く残したい子に残高の大きい預金や評価額の高い上場株式を、残りをもう一人の子に相続させるなどです。民法908条)が考えられます。
相続分の指定の場合は改めて遺産分割協議が必要となる!
前者の場合は、相続分(相続割合)を指定するだけですので、改めて遺産分割協議が必要となります。後者の場合は、遺産を漏らさず特定して、それぞれについて誰に「相続させる」かを定めておけば、改めて遺産分割協議を経ることなく当然に各相続人が遺言で定めたとおり遺産を取得することができます。特に、不動産の場合は、遺言を登記原因証書として、単独で相続による取得の登記をすることが可能です。
このほか、バリエーションとして、遺産を全て売却換価して、相続人ごとに取得割合を決めて換価代金を配分する、土地建物を老齢の妻に残し、残りを、取得する遺産を特定して子二人に相続させるようにし、万が一過不足が生じる場合は妻が代償金として子らに一定の現金を交付する、などの方法も考えられます。
遺留分を侵害しないように遺言を残す配慮を!
なお、遺産を多く残したいと思うあまり、妻ともう一人の子に残す遺産が少なすぎると、遺留分を侵害されたとして、後日、多く相続した子が、妻ともう一人の子から遺留分相当額の返還を求められることがあります(遺留分減殺請求、民法1031条)。
ご質問のケースでは、妻には所定の方法で計算した遺産総額のうち4分の1の、子には8分の1の遺留分が保障されていますので、これらの割合を下回らないように、うまく相続分の指定や遺産分割方法の指定を行う必要があります。
ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所
弁護士好川久治
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