Q&A

未成年者がいる場合の遺産分割手続

Q. 先月夫が亡くなりました。私には小学生の子供二人がいます。銀行に亡夫の預金の払戻しをお願いしたところ、子供二人について家庭裁判所で特別代理人を選任してください、と言われました。私が子供二人を代表して預金の払戻しをすることはできないのでしょうか。亡夫名義のマンションもあるのですが、妻である私に名義変更をすることはできないのでしょうか。

A.家庭裁判所で特別代理人を選任する!

 

 法的な理屈はともかく、現在の銀行の相続預金の実務によれば、相続預金の払い出しのためには家庭裁判所でお子さん二人について特別代理人を選任するのが簡単ではないかと思います。夫名義のマンションについて、持分全部を質問者の名義にするためには、同じく家庭裁判所で特別代理人を選任し、質問者がマンションの持分全部を取得する見返りにお子さん二人に対し、相続分に相当する代償金を支払う内容の遺産分割協議書を作成する必要があるでしょう。

 

預貯金の払出しにも事実上特別代理人の選任が必要となる

 

 まず、相続預金について、銀行の普通預金、ゆうちょ銀行の通常貯金は、お金を請求する権利(金銭債権)ですので、相続により当然に分割承継され、各相続人は自分の相続分に見合う金額について銀行に対し払戻しを請求できるとされています(最高裁昭和29年4月8日判決ほか)。銀行の定期預金についても争いはありますが、同様に当然分割を認める考えが有力です。逆に、ゆうちょ銀行の定額貯金については当然分割を認めない考えが有力です。

 

 しかし、銀行実務では、一部の銀行を除いて、当然分割を前提とした相続人からの払戻しには応じてくれません。相続人間の争いに巻き込まれたくないというのが理由のようです。そのため、銀行実務では、相続人全員の同意を得て代表者を選任し、その代表者が払戻しをするか、相続人全員が署名捺印をした遺産分割協議書を提出する必要があります。

 

 質問者のケースのように、相続人のなかに未成年者がいる場合、親権者で相続人でもある親と子がともに相続人として遺産分割協議書に署名捺印をしなければなりません。

 

 しかし、親は子の親権者として子のために分割協議をする義務を負う一方、相続人としての立場でも協議に参加するという相矛盾する立場に立つことになります。

 

 このような場合は、親は子を代表する権限がなく、親権者である親は家庭裁判所に子のために特別代理人を選任して子のために遺産分割協議をしてもらう必要があります(民法826条)。子が二人いれば、二人とも特別代理人を選任しなければなりません。

 

 特別代理人を申請するには、特別代理人の候補者(親戚の方でも構いません。)を指定して遺産分割協議書の案を添えて家庭裁判所に申請します。
 

マンションを単独名義にするなら代償金の支払が必要!

 

 夫名義のマンションの名義変更をする場合も同じで、各人が相続分に応じて相続登記をする場合を除き、親権者である質問者は子二人のために家庭裁判所で特別代理人を選任してもらう必要があります。

 

 特別代理人は、子のために子の利益となるように遺産分割協議をしなければなりません。家庭裁判所の実務では、特別代理人の申請の際、予め遺産分割協議書の案を提出し、その内容が子の利益に反しないかどうかを審査するようにしています。

 ですから、申請にあたって提出する遺産分割協議書の案は、子の相続分を侵害しないものとしなければなりません。亡くなった夫のマンションを全て質問者の名義にするなら、子に不利益とならないよう、質問者から子に対し、子の相続分に相当する代償金を支払う内容としなければなりません。

 

 このように、手続的には多少やっかいで融通が利きませんので、子が成人に近い場合は、子が成人になるのを待って遺産分割協議をするのがよい場合もあるでしょう。

 

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