不当解雇の慰謝料請求と残業代請求の裁判を起こして、ほぼ請求どおりの和解が成立した事例
●相談内容●
広告会社に勤めていたが、上司が所定労働時間を1時間経過する午後8時まで全員を帰宅させず、居残りさせることが常態化していた。営業の会社だから居残るのは当たり前という雰囲気のなか有給休暇は1日もとれず、残業代も支払われなかった。従業員は入社しては次々と辞めて行き定着しなかった。あるとき相談者が、体調が悪くて有給休暇を取得して翌日に出社すると、「お前が有給とるから職場の士気が悪くなった」と大勢の前で怒鳴られ、「明日からこなくていいから」と言われて解雇された。残業代を請求すると給与に含まれているとして支払を拒否された。会社には戻るつもりはないが、残業代だけは請求したいとして弁護士に相談。
●解決事例●
元会社は、過去に退職した従業員のタイムカードを破棄したことがあったため、証拠を確保するため、裁判所にタイムカードの証拠保全を申し立てた。裁判所と同行して会社を訪問、その場でタイムカードを確保し、印刷をして証拠を保全した。その後、違法な退職勧奨により退職を余儀なくされたことによる損害と、過去2年分の残業代、これに残業代と同額の付加金を請求して提訴。裁判では、退職勧奨の違法と残業代の未払いを前提に、ほぼ請求どおりの内容で和解が成立した。
●ポイント●
有給休暇を取得することは労基法で認められている従業員の権利ですから、その取得を非難して取得を躊躇させることは違法です。まして、有給休暇の取得を理由に大勢の前で暴言とも取れる言動をとって解雇することは、パワーハラスメントにあたりますし、解雇は無効となります。また、居残りを強要して残業代を支払わないことも当然違法ですから、未払残業代を請求できます。法的には、以上のように言えます。ただし、実際に請求するには証拠が必要です。相談者のケースは、退職後すぐに弁護士に相談をして、解雇に至った経過を正確に再現でき、他に解雇を正当化する理由が見当たらなかったことから、違法な解雇は比較的容易に立証できました。タイムカードについては、過去の証拠隠滅ともとれる行為があったことから、証拠保全をし、ほぼ完全な形で労働時間を証明できたことも解決につながったと言えます。未払残業代の請求で証拠保全をするケースは、実際にはそれほど多くありませんが、タイムカード以外に労働時間を証明できるものが全くない場合には、その唯一の証明手段ともいえるタイムカードを証拠保全することが必要であったと言えます。