実際の解決事例

失業して転がりこんできた子供に家を追い出された事例

●相談内容●

相談者は、アパートで独り暮らしをしていた70代の年金暮らしの女性。2年ほど前に長男が失業して住むところがなくなり、仕事が見つかるまでの約束で母親の住むアパートにしばらく住むことになった。しかし、長男は就職活動もせず、家に引きこもりがちになり、母親にも暴言を吐き、暴力をふるうようになった。母親はたまりかねて自ら家を出て親戚のところへ避難。長男は、ストレスから精神的にも不安定になっているようで、母親も本音では家を出て一時的でも生活保護を受けて治療と就労支援を受けながら社会復帰してほしいと思っていた。しかし、アパートは同居人を住まわせることが禁止されており、このまま長男に居すわられると契約違反で母親自身が追い出されかねない。相談者は、直接会って話をすることについては抵抗があったので、役所に相談して長男に連絡をとってもらおうとしたが、なかなか長男と連絡がとれず、面会の約束をしても果たせないことが続いmた。

●解決事例●

相談の結果、弁護士が受任をして、賃借権の侵害を理由に部屋の明渡を求める裁判を提起することを決断。長男と示談を試みても、これまでの経過から、すんなり長男が話し合いに応じるとは思えず、時間ばかりかかって無駄になることが予想された。裁判を起こせば長男も放置しておくわけにもいかず、裁判所で話し合いができれば、強制力のある形で確実に明渡を受けられ、かつ、長男にとっても、なかなか踏み出せなかった今後の生活について真剣に考えるきっかけになる可能性があると考えた。ところが、裁判を起こしても、長男は裁判所からの呼出状を受け取らない。そのため、手続を進めても、長男が裁判所に出頭して話し合いにより円満に解決することは期待できなかった。仕方なく、不在のまま裁判は進められ、長男は欠席判決により裁判所から明渡を命じられた。しかし、判決が出る直前、長男は自ら役所に連絡をして支援を求め、その協力を得て自主的に退去した。裁判を起こす前に弁護士から退去を求める通知を出していたこと、その後、裁判所から郵便物が届いたことを示す不在票が入っていたことで、何が起こっているかを予想できたのだ。

●ポイント●

この事例の紛争の当事者は親子のため、できれば強制執行により立退きを求めることは避けたいところです。その意味で、寸前で強行手段を回避することができたことは幸いでした。紛争が起きたとき、話し合いで解決ができるのが一番です。しかし、話し合いがこう着状態になったとき、最後は裁判を起こすしかありません。裁判を起こせば必ず何らかの結論がでますので、双方は真剣に紛争解決に向き合わざるを得なくなります。裁判所でお互いが主張と証拠を出し合い、自らの有利な点、不利な点が明らかになるうちに、ある段階和解による解決の機運が生まれてくることが常です。裁判所も、話し合いができる余地のある事件では積極的に和解を勧めます。実際に裁判所で和解が成立して紛争が解決することは多数に及びます。白黒つけることだけが裁判の目的ではありません。紛争解決手段のメニューの一つとして、積極的に利用すべきでしょう。

弁護士好川久治

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