砂川市の1家5人死傷事故について
北海道砂川市内で一家5人死傷事故が発生!
今月6日、北海道の砂川市内の交差点で1家5人が乗った軽ワゴン車と、信号を無視して交差点に進入したとみられる乗用車(RV車)が衝突し、軽ワゴン車に乗っていた親子5人のうち4人が死亡し、1人が重体となる事故が発生しました。
RV車には直前まで居酒屋で飲酒していた友人数人が乗車し、時速100キロを超える猛スピードで赤信号の交差点に進入したとされています。
また、この事故では、軽ワゴン車から投げ出された16歳の男子高校生が、猛スピードで走ってきた後続のトラックに現場から約1.5キロにわたって引きずられ、死亡しました。男子高校生は、死体で発見されましたが、死因は胸などを圧迫されたことによる窒息死であったそうで、引きずられていたときは未だ生きていたようです。
トラックを運転していた容疑者も、RV車に乗っていた友人らとともに飲酒をして、現場の道路を猛スピードでカーレースのように走っていたようです。
この事故で、RV車の運転者とトラックの運転者が逮捕されました。逮捕容疑は、それぞれ危険運転致死傷罪(RV車)、道路交通法の救護義務違反(ひき逃げ)(トラック)です
大変痛ましい事故で、繰り返される飲酒運転による重大事故にやりきれない気持ちでいっぱいです。1家5人のうち、1人だけ助かった12歳の女の子が不憫でなりません。
高校生を引きずったトラックの運転者は、「人をひいた認識はない。」と容疑を否認しているようですが、事故現場から高校生が発見された現場まで、蛇行運転をした形跡があったようですから、意図的に人を振り払おうとしていた様子がうかがえます。
懲役30年の刑に処せられることも!
この件で、先日テレビ局の取材を受けました。
RV車の運転者は、時速100キロを超える猛スピードで赤信号を無視して交差点に進入し事故を起こしていますので、危険運転致死傷罪で起訴されることになると思います。しかも、トラックの運転者とは、直前にいっしょに飲酒し、猛スピードでカーレースのようなことをしていたようですので、自動車運転過失致死傷罪の共同正犯(共犯で、ともに全体について罪を問われます。)が成立し、16歳の高校生を含む4名の死亡と1名の重体について責任を問われることになるでしょう。
結果の重大性から考えると、最高刑の懲役20年近くで処罰されることになると思います(スピード違反や飲酒といった道路交通法違反の罪も合わせて立件されると20年以上になる可能性はありますが、証拠不十分で起訴されない可能性があります)。
他方トラックの運転者は、RV車の運転者と危険な運転を共同で行い死傷の結果をもたらしていますので、危険運転致死傷罪の共同正犯が成立し、この罪と逮捕容疑となった道路交通法の救護義務違反(ひき逃げ)で起訴される可能性が高いのではないかと思います。
これらの罪は併合罪となり処断刑の最高は30年です。事故後高校生を1.5キロにわたってひきずっているなど犯情も悪いですので、かなり重い処罰が予想されます。
殺人罪で起訴されることもある!
また、高校生のひきずり行為については、生きた人間をひきずっている認識があり、死んでもよいと考えて振り落とそうとしていたとすれば、殺人罪での起訴も考えられます。
2008年10月に大阪市北区梅田で起きた飲酒無免許のひき逃げ事件で、同様に事故後3キロにわたって被害者を引きずり死亡させた事件は、殺人罪と道路交通法違反(飲酒、無免許)で起訴されています。このときの被害者は1名でしたが、裁判所の判決は懲役15年でした。
砂川市の事件は容疑者が自首していますが、飲酒運転の発覚を逃れる意図があったとも見えますし、人をひきずった事実を不合理に否認していること、被害者の数が5人と多いことなどを考えると、さらに重い刑罰が科せられる可能性があります。
加害者は任意保険にも加入していなかったと言われています。残された遺族が十分な補償を受けられない可能性があります。容疑者に対しては、心からの反省を促し、同種犯罪の防止のためにも適切な処罰がされることが望まれます。
ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所
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